
照明で飾る
照明器具の用途は大きく分けて、機能照明と装飾照明と呼ばれるように、適切な明るさを得ることを目的とするものと“飾る”ことを付加要素としつつ目的とするものに分かれます。
“照らす”と“飾る”、、、。遡ると、どちらも歴史が長いものですが、住まいを照らす・住まいを飾る、、、という観点にたつと、“飾る”行為のほうが古くから行われているような気がしています。
“住まいを照らす”の歴史は、障子・窓などからの自然光による採光や、松明やろうそくによる火を灯すことを別にする(効果がかなり限定的なので)と、やはり電灯照明以降ということになるのではないかと感じています。
エジソンによる白熱電灯実用化が産業革命後の1879年なので、約130年の時の経過であり、この間に約60年ごとに光源に革新が加えられ(蛍光灯・LED)、新たな光源が主役交代を遂げてきている流れとなっています。
これに対して、“住まいを飾る”の歴史は、庶民の間でインテリア文化の骨子が整ったとされるルネサンス期(14-16世紀)以降と考えることが出来るかと思います。(上流階級の間では11-12世紀には装飾性が備わった調度品使用の痕跡も見られたようですが、、、)ルネサンス期には、建築家がひとつのステータスを得るようになり、優れたデザイン構築を競った結果、飛躍的な彫刻技術の進歩をもたらし、壁や天井・家具などへの華麗な装飾性が一気に増していったようです。
こうした経緯をみると、技術革新による便利さに焦がれながらも、もっと根源的な部分において、暮らしを楽しんだり、潤いを求めるという精神的要素が原動力となっている気がしてなりません。
そもそも照明器具はインテリアの一部と捉えられていることが多く、インテリアという言葉は、日本語で室内装飾品という意味をもち、室内装飾や付随する照明・装飾家具のことを表すのが一般的であり、広義のインテリアは室内を装飾する品物全般を指すものの、狭義ではそのなかでも装飾性に特化されたものだけを指すようです。
また、装飾品などの品物全般よりも、それによって飾られた室内空間という概念が強い言葉であるようです。
こうしたことを考え合わせると、照明器具が装飾照明としての用途が多いことにもうなずくことが出来、『照明で飾る』ことが至極自然なことであり、啓蒙されるべきものと、改めて感じる次第です。